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格闘技の錯覚? 攻撃力と攻防技術の違いは?

公開日: : 最終更新日:2019/07/03 実戦護身論

 

 

これは格闘技の技術を考える上で初歩的な事でもあるのですが、

意外に分からない人もいるのが、攻撃力と攻防技術の違いです。

 

今回はこれについて書いてみます。

 

【目次】

1、動かない相手なら攻撃力だけでいい

2、動く相手には攻防が必要になる

3、熊の一手よりも蜂の千手

 

 

 

1、動かない相手なら攻撃力だけでいい

格闘技の初歩的な発想は攻撃力の増大です。

 

例えば、以前は空手家が板や瓦を割ったりする事で、その強さをアピールし、

人気を集めた事がありました。

 

アメリカのプロ空手選手だったベニー・ユキーデも、その試し割りの威力を見て、空手を始めたそうです。

 

武器を持たない素人が人を叩いても、そんなに簡単に人は倒れてくれない物ですが、

空手のパンチなら、簡単に人体の骨を砕く事が出来るような錯覚に陥ったのでしょう。

 

しかし、空手の試合を見れば分かりますが、

試し割りの記録の高い選手が試合に勝てるかと言えば、全く別問題です。

 

 

また、プロボクサーのマイク・タイソンのパンチ力が○○○kgもあるから最強だ、と単純に言う人もいますが、パンチ力でタイソンを上回る人間は何人もいるでしょう。

 

ただそういう人間がボクシングの試合で、マイク・タイソンに勝てるかと言えば、全くの別問題ですよね。

 

もしパンチ力だけで勝敗が決まるのなら、試合なんか必要ありません。

パンチ力測定だけで競えば、結果が分かる事になります。

 

 

しかし、そういう事が分からない人がいるんですね。

 

例えば、中国の伝統武術では発勁という強大なパンチ力を出すと言われています。

その強大なパンチを人が喰らえば、数メートルは吹っ飛ばされると言います。

そういう発勁の技術を身に付けられた人が、人を飛ばすデモンストレーションを行う事があります。

 

そして中国武術の発勁は、ボクシングのパンチよりも遥かに強くて、最強だ、

と思い込んでいる人がいたりします。

しかし、それでボクサーと闘おうという人は現れません。

今の時代に、昔の空手家の試し割りのようなデモンストレーションで人が納得してくれるだろう、と思い込んでいる古い考えの人がいたりするのです。

 

 

試し割りというのは、動かない固定の目標物を狙うから、力が伝わり割れるわけです。

打つ瞬間に、目標物が数ミリでも動いたら、ジャストミートの瞬間を逃し、

全く割れません。

 

発勁にしろ、その他のパンチにしろ同様ですが、

その強大なパワーを伝えたいのなら、動かない、固定した目標物だけを対象にしなければなりません。

 

 

 

2、動く相手には攻防が必要になる

対戦する相手は当然、何もせず、その場にじっと立っているわけがありません。

こちらが攻めたら、相手は防御をします。

 

つまりは、常に動き回り、こちらの攻撃には防御をし、反撃をしてくる相手に、どのような駆け引きをするのか、

という攻防技術が必要になるのです。

 

将棋をした場合でも、大きな兵力である飛車・角行があれば勝てるわけではありません。

自分より高いレベルの相手と対戦したら、たとえ相手に飛車・角行抜きのハンデ戦にしてもらっても、負けてしまった経験をした人もいるのではないかと思います。

 

 

ボクシングの試合でも、いきなり強いストレートを打つ人はいません。

簡単に躱されてしまうからです。

先ずは軽いジャブにより、相手の動きの反応を読み、

如何にいいタイミングでパンチをヒットさせるか、計算しながらするのです。

 

相手に勝つにしても、一定の力があればいいのであり、必要以上に強い攻撃力を持つ事はありません。

100kgの力で壊れる物に対して、200kgの力を持とうとしても無駄な労力です。

 

例えば、人間を一人、殺すのに、核爆弾を持とうと思う人はいません。

ナイフ一本でもいいくらいです。

 

それよりも必要なのは、動く相手に対して、いかに自分の100kgの攻撃を極めるか、

という駆け引き、攻防技術になります。

 

 

 

 

 

3、熊の一手よりも蜂の千手

昔の武道家には「蜂の千手よりも熊の一手」という発想を持つ人がいました。

 

昔のボクシングも、今のようなフットワークと連打で攻めるスタイルではなく、

古流の空手と同様に、どっしりと腰を落として、一発の強いパンチを狙っていくスタイルでした。

 

格闘技の原始的な発想は、このような攻撃力の増大にあったのでしょう。

 

まだ試合の経験が浅い、古い時代の選手相手には、このような方法でも、ある程度の効果はあったのかもしれません。

しかし、試合を繰り返していくと、みんなが段々、相手の動きを研究していくようになり、

どのように相手の攻撃を防ぐか、という対策も進んでいきます。

 

古くから競技を行っていたボクシングでは、その試合経験の累積により、より効率的な攻防技術が研究される事になりました。

 

それを象徴するのが、1892年9月7日に、アメリカのニューオーリンズで行われたジョン・L・サリバンとジェームズ・G・コーベットによる世界タイトルマッチです。

当時、無敵の王者であったサリバンは、「熊の一手」的な強い一発のパンチで相手を倒すスタイルでした。

それに対して挑戦者のコーベットは、フットワークを使った新しい技術を見せました。

 

サリバンの強いパンチをフットワークで躱し続け、軽いパンチを相手に当てては逃げる、

の繰り返しで、当時の観客からは「あんな闘い方は卑怯だ」とまで言われます。

 

しかし21ラウンド目にサリバンはとうとう、コーベットにKOされます。

そしてコーベットのスタイルでないと、試合に勝てないという流れになり、

みんながそういうスタイルになっていきます。

そして近代ボクシングの技術の基礎が出来上がっていったのです。

 

これにより時代は「蜂の千手よりも熊の一手」から、「熊の一手よりも蜂の千手」変わっていったのです。

 

防御を知らない相手には、最初は単純な攻撃力だけで勝てていても、

やがてそれだけでは通用しなくなります。

 

そのために駆け引き、攻防技術が研究される事になります。

 

 

今の時代に、空手家を試し割りの記録で評価する人はいません。

試合の実績によって評価されます。

 

試合もせず、強い技のデモンストレーションだけ見せれば、人が納得してくれると思うのは、前時代的な考えなわけです。

 

 

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    武道と旅と昼寝が好きな怠け者。

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