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武道は伝統か、進化か? 形と乱取りの関係について

公開日: : 最終更新日:2019/04/13 実戦護身論

 

伝統を重んじる武道の世界は、建前の世界になっています。

しかし何も知らない初心者は、その建前の話を事実だと思い込み、

素直に話を聞きすぎて、無駄な時間と労力を費やしてしまうという弊害があります。

 

敬老精神や伝統尊重の考えも大事ですが、そのために正しい事実を伝えなければ、

これから新しい可能性を切り開くべき若者達にずっと無駄な努力をさせてしまいます。

 

今回はその武道の技術について、形と乱取りの関係について書いてみます。

 

【目次】

1、形の稽古だけで強くなるというのは本当なのか?

2、武道の技術も進化していく物

3、形と乱取りは両輪、形は更新し続けていくべき

 

 

 

1、形の稽古だけで強くなるというのは本当なのか?

伝統的な武道では、形の反復稽古により強くなる事を目指します。

 

日本武道の形は通常、二人一組での攻防の形なのですが、空手は一人での単独形です。

これは中国武術の影響が強いせいでしょう。

(テコンドーは空手から派生したので、同様の独練の形を行います。)

 

中国武術ではむしろ一人での形が主体で(套路と呼ぶ)、ごく希に二人で組んで行う対打の形があったりします。

そして流派によっては、やたら神秘化しようとします。

 

正しい形を身につけて反復練習すれば、強大な力を得る事が出来る…

みたいな事を、現在でも真顔で主張し、それを信じ込んでしまう生徒もいます。

 

中国武術でも散打競技が確立し、現代的な格闘技術が出来上がっているのに、

それでもなお、「あれは中国武術ではない、レベルの低い物だ」

と主張する人が太極拳等を含む伝統中国武術界にいたりするのです。

 

建前だけで言っている人もいれば、それを本気で信じ込んで強く主張する人もいるのです。

 

合気道でも一部、そのような神秘的な力を主張し、素直すぎる生徒がそれを信じ込んでしまっている例があります。

 

伝統武道では一部、そのように宗教化してしまっている世界もあるのが厄介な所です。

 

 

 

 

2、武道の技術も進化していく物

武道の技術も進化していく物です。

競技歴の長いボクシング、レスリング等は早くから洗練された技術体系が出来上がっていましたが、日本の空手等も、競技化以降、技術は見違えるほど進歩しています。

 

古い一撃必殺的な単純な技術から、現在ではフットワークや連打を主体とする、より戦略的な闘い方が当たり前になっています。

→参考記事:格闘技の錯覚? 攻撃力と攻防技術の違いは?

 

しかし、古い時代の先生は、そういう新しい技術を否定し、古い伝統の技術こそが正しい、

等と主張する人もいます。

ですが、これはその先生の願望に過ぎません。

 

勝敗を一番、重視し、最良の技術を求めているのは、試合に出ている当の選手たちです。

伝統の技術で勝てるのなら、技術を改良したりする必要はないのですが、

技術は常に改良し、進化させなければ、試合に勝てないのが現状です。

 

 

では、古い時代の武術と現代とでは、どこが違うのでしょうか?

 

真剣に命のやり取りをしていた古い武術の世界では、”技の非公開性”という特徴がありました。

現在の格闘技と伝統武術とでは、この技の公開性・非公開性に関して大きな違いがありました。

 

生死をかける闘いもあった昔では、自分の技を他人に見せないようにしていた物です。

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」

というのは有名な言葉ですが、逆に言えば、

相手が自分の技を知らなければ、勝てる確立が高くなるからです。

 

そのため、昔は流派に入門する事が非常に難しく、技の稽古は秘密裏に行われていました。

そして流派の先生が自分の技術を形として順番に伝えていきます。

中国では、更に徹底した秘密主義で、独練の形が発達したのでしょう。

 

先生が自分の経験を通して、

「こういう場面の時に、この技術を使ったら勝てた」

として、その時の状況を作り出し、全く同じ事をしていくのです。

 

この形の反復によって技術を身につけていくのが、古武術の世界です。

 

しかし年月を経るとともに、いつしかその神聖な技術を一点の間違いもなく、

同じ形で伝える事を目的とするようになるのです。

個人が由緒ある形を勝手に変えてはならない雰囲気が非常に強く、50年、100年前に創られた技術を一点の間違いもなく伝える事が重要となってしまうのです。

 

これらはまるで骨董品を扱うような、伝統芸能を保存するという意味はあるのですが、

もはや実用性を求める物ではないのです。

 

近代になって武術が競技化され、公開されるようになると状況は変わります。

他人の技術を見て盗む事も出来るし、その対策法も研究出来ます。

 

そのため、更に上の手段と技術を研究しなければ勝てなくなるのです。

 

 

 

 

 

3、形と乱取りは両輪、形は更新し続けていくべき

 

しかし形が全く意味がないのかと言えば、そうでもありません。

 

天才的な武術家が、自分の閃きで作った技術等もあるのですが、

それを形にする事で、より多くの人がその技術を理解し、誰もが身に付けるようになるからです。

そして一人の芸だった物が、万人の芸へと伝達可能になるのです。

 

ある空手家は、空手を将棋に例えてこう言います。

「将棋で言う定石を、空手の中で作りたい。

そしてそれを原則とすれば、あらゆる選手の技術を定石として整理出来る。

 

定石というのは、その時の最もいい手法の記録であると思う。

そして残念ながら、やがてその定石は後輩に否定され、破られてしまう。

こう言うと変な言い方だが、定石は壊されるためにあるような物だ。

つまり、定石は更に新しい定石を作るためにある。

試合で定石通りにしても勝つことは出来ない。

私の定石、彼の定石、幾人もの定石があって、それを壊して更に新しい定石を作り上げていく。

そうしてより進化した技術が出てくる。」

 

 

このように形は更新し続けていくべきものなのです。

 

100年前の形を文化として残すのはいいですが、それを過度に神秘化するべきではありません。

20年前の形、10年前の形、現在の形を知る事で、これから更に有効な形を研究する事も出来ます。

 

武道の世界では、立派な先生がいる事を誇りにする風潮もあるので、

昔の先生の教えを絶対視したがる所もあります。

年をとった先生がいつまでも自分の立場を守りたいがために、古い形の教えに拘る場合もあります。

 

伝統文化を学びたい人に、古い形を教える事はいいのですが、

現代における実用性を求める人にそれを教えるのは、方向性がまるで違う事になるのです。

 

中国武術でも、現代的な散打の技術が出来ているのに、

古い太極拳、形意拳等の技術の方が高度で優れている、と主張する先生方もいて、

それを素直に信じ込んでしまっている若い生徒が、無駄な修行を続けている例もあるのです。

口で主張するのではなく、実際に試合に出てその技術の有効性を見せた方が、誰もが納得するはずなのですが、そういう事をする人はいません。

 

客観的に考えれば分かる事でも、当事者には分からなくなっている事があるのです。

 

伝統の形も、先人の多くの研究、努力によって創られた物で、尊重するに値しますが、

過度に神秘化するべきではないのです。

 

 

 

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    武道と旅と昼寝が好きな怠け者。

    今は武道もほとんど見るだけ。

    忍びながらブログを書いております。

    一応、元空手五段、合気道三段、空道二段、柔道初段、スポーツチャンバラ四段

    武術太極拳 アジア選手権・世界選手権 日本代表

     

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