武術・武道・格闘技の違いとは何なのか?
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最終更新日:2019/07/03
総論
様々な呼び方がある武術・武道・格闘技ですが、ニュアンスは若干違いますね。
皆さんはどう思われるでしょうか?
人によっては「格闘技ではなく武術」「武術ではなく武道」
のように感覚的に言っていますが、主観による言い方では、他人に意味が伝わりません。
私は時期とその内容で分けています。
1、江戸時代以前の武術
2、明治時代以降の武道
3、戦後の格闘技
おおまかに言うとこんな感じですが、簡単に説明したいと思います。
1、江戸時代以前の武術
古い時代では武術、武芸等と呼ばれ、剣術、柔術が主流でした。
流派も多く乱立し、その流派毎に極意書があったり、初伝・中伝・奥伝等とランクが分かれた技術の形がありました。
身分制度のあった時代により上下関係は厳しく、技術にもランク分けがなされ、生徒が先生に、後輩が先輩に勝つ事は出来ないようなシステムでした。
2、明治時代以降の武道
明治時代移行は身分制度が無くなり四民平等となり、武術も変化していきました。
嘉納治五郎が柔術から柔道を作り上げ、その後、剣術も剣道に、武術も武道と呼称を変える事になりました。
そうは言ってもすぐにその名称が定着したわけではなく、大体、大正から昭和になって、ようやくその呼称が定着した感じです。
嘉納治五郎は古流柔術の形稽古の反復ではなく、乱取りを主体とした柔道に変革し、生徒、先生、後輩、先輩関係なく勝負が出来るシステムに変え、競争原理により技術を進化させて行きました。
これはその時代に合致した変化と言え、徐々に競技化へと繋がっていきます。
そして武術の稽古を通して道徳をも修めるという教育的配慮を強調して柔道という名称に変えました。
同様に剣術も剣道に、武術も武道となりました。
明治時代以降はすでに武士の時代ではなく、武術の価値は低くなっていましたが、
武道は武術を通して教育するという意味から、その価値を保っていったと思われます。
江戸時代以前も武士道的な道徳は、武士階級のみならずあったと思いますが、
武術の価値が低くなった明治時代以降により、その精神面が強調された事により、社会から認知されるようになったのだと思います。
3、戦後の格闘技
その後、世界大戦で日本軍の強さに手を焼いたアメリカは、日本を占領後、日本の強さの源である武士道、武道を否定し、禁止しました。
武道禁止令が出され、武道は表立って活動する事が出来なくなりました。
そのため”格技”と言う名称で、体育課目に導入したりするようになります。
《剣道も撓(しない・竹刀)競技という名称になったりしました》
それが後の格闘技という言葉に繋がったと思われます。
特にこの格闘技という言葉を定着させたのは劇画作家の故・梶原一騎氏による物ではないかと思われます。
「あしたのジョー」「タイガーマスク」「空手バカ一代」「キックの鬼」等の格闘技を始めとする数々のスポ根の名作を出し、
特に「四角いジャングル」では、プロレス、空手、キックボクシング等、様々な格闘技を扱い、「格闘技界」という言葉も出てきました。
戦後、発達したプロレスでも異種格闘技戦というイベントを度々行ない、現在では格闘技という言い方が主流になっています。
特に戦後はスポーツとして格闘技が発展したため、ルールの元で勝敗を争う格闘競技が主流となりました。
以上が時代と内容による変化です。
古い武術の時代には競技はなく、流派の形の稽古による伝承芸でした。
近代になり徐々に競技化されスポーツ化し、格闘技と呼ばれるようになります。
ある人は嘉納治五郎を「武術を格闘技にした人」と言っていましたが、分かりやすい言葉ですね。
武道は近代になって定着した呼称です。
武道の中には武術である物、格闘技である物があります。
少林寺拳法や合気道(一部、例外もあるが)のように形稽古のみをする物は武術と言えますし、
柔道や空手(こちらも一部、例外はあるが)のように競技を前提としている物は格闘技と言えます。
もちろん西洋から入ってきたレスリングやボクシングは格闘技です。
特徴としては、武術の場合は決まった技術体系があり、その決まった技術を正確に身に付ける事が重視されます。
格闘技の場合はルールの範囲で勝敗を争う物なので、ルールを理解し、技術は自分で工夫し進化させる事が必要となります。
例えば少林寺拳法の場合は、三法、二十五系、六百数十の技が決まっており、それらの技を正確に継承する事が重視されます。
競技がないために、段位による地位が絶対的に重視されます。
柔道も本来は武術なので、柔道の形という物はあるのですが、それよりも第1条、第2条…と続く競技ルールを守る事が絶対の前提で、その範囲内で何をしてもいいので、個人で技術を工夫する必要もあります。
柔道の全ての技を覚える必要はなく、得意技のみを磨いて勝負に勝てればいいのです。
背負投の入り方も決まった入り方だけでなく、個人で工夫した技の掛け方を開発していたりします。
段位もありますが、試合成績の方が重視されます。
九段、十段という高段位を取るのは高齢者ばかりですが、それよりもオリンピックに出場している若い初段の選手、ましてやメダリストの方が重宝されるというのは、皆さんも分かりますよね。
このような違いを理解すると、より武道が理解しやすくなると思います。
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